あなたは普段の業務で“腎機能”をどれくらい意識できているでしょうか。

あまり意識できていないな…

薬剤師なら腎機能に注意するのは当然でしょ!
今回はどちらの方にもオススメできる1冊『腎薬ドリル』を紹介します。

本書は、“問題を解いて”から“解説を読む”構成で、アウトプットしながら腎機能を学べる点が特徴です。
腎機能評価の考え方や投与設計を、症例ベースで整理できる内容になっています。
この記事では、『腎薬ドリル』を実際に解いて読み込んだ薬局薬剤師の私が、
・本書の特徴
・学んだこと
・現場に活かしたこと
・オススメできる人
を整理しました。

腎機能の勉強をしたいものの、本が多くて選べないと感じている方の参考になれば嬉しいです。
| 評価項目 | 評価 | ポイント |
|---|---|---|
| 総合評価 | 多くの方にオススメできる1冊です。薬剤師であれば、一度は本書で勉強してほしいと感じました。 一方で、薬局薬剤師よりも病院薬剤師、初学者よりも他に腎機能の本を読んだことがある方の方が、より学びが多いと感じました。そのため満点ではなく、星4としています。 | |
| 実務での活かしやすさ | 現場で開いて使う本ではないと感じました。 ただし、一部にはコピーして手元に置いておきたいと感じる一覧表もあり、実務に活かせる要素も含まれています。 | |
| 自己学習への向き | 完全に自己学習向けの1冊です。問題を解く形式のため、紙とペンに加えて腎機能計算ツールを使えるデバイスが必要です。そのため、電車で読書のような隙間時間には向きません。 机に向かってしっかりと時間を確保して取り組むことで、学びを深められる内容です。 | |
| 読みやすさ | 文章自体は読みやすく、ストレスを感じることはありません。 難易度はやや高めなので、スラスラ読み進められるタイプの本ではありませんが、「読みにくい」と感じることは少ないと思います。 | |
| コスパ | 税込3,630円。医療書としては標準的な価格帯です。 しっかりと読み込み、自分の知識として定着させることができれば、コストパフォーマンスは高い1冊だと感じました。 |
【のしんの一言】

知識を活かせるかどうかは、“自分次第”ではなく“環境次第”かもしれません。
もし今の職場に違和感があるなら、一度こちらの記事も読んでみてください。
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『腎薬ドリル』はどのような本なのか【アウトプットで実務力を高める1冊】

まずは、『腎薬ドリル』がどのような本なのかを整理していきます。
本書は単なる知識のインプットではなく、問題を解きながら理解を深めていく構成が特徴です。
では、本書の全体像と特徴を見ていきます。
腎機能評価の基本から、症例を通じて個別具体の知識まで学べる本
本書は全21章で構成されており、基礎編と実践編に分かれています。
基礎編では、腎機能を評価する検査の原理から始まり、検査値の見方や腎機能の計算方法を学ぶことができます。
さらに、慢性腎不全患者の投与設計の基本や、肥満患者・サルコペニア(筋肉量が減っている状態)といった患者背景に応じた腎機能評価の考え方も整理されています。
実践編では、透析患者への投与設計や、バンコマイシン注・アシクロビル注など、腎機能に応じて細かな用量調整が必要な薬剤の扱いを学ぶことができます。
また、がん患者への緩和医療やネフローゼ症候群など、さまざまな症例を腎機能評価の視点から考える構成になっています。

基礎編で学んだ知識を、実践編で症例に当てはめて考えることで、腎機能評価の理解をより深められる1冊だと感じました。
読むだけで終わらない、”問題演習型”の参考書
本書は、全21章すべてに症例と問題が用意されています。
その症例の問題を解き、その後に解説を読む流れで学べる構成になっています。

私自身、初見の問題では半分程度の正答率でした。

いや、半分も正解できていなかったかも…。見栄を張りました。
しかし、解説を読んだあとにもう一度問題を解き直すことで、最初は分からなかった問題が解けるようになりました。
自分の理解が深まっていく過程が目に見えるため、学習の手応えを感じながら読み進めることができました。
単に読むだけではなく、「解く→理解する→もう一度解く」というプロセスを繰り返すことで、知識をアウトプットしながら学べる点が特徴だと感じました。

受け身で読み進める参考書とは異なり、自分で考えることが前提となる1冊です。学習の負荷は高いものの、その分、理解が深まりやすい構成になっています。
執筆者は全員、病院薬剤師
本書は、21の症例が収載されており、それぞれの症例を1人の執筆者が担当しています。
1人で複数の章を執筆している方もいますが、執筆者は全員病院薬剤師です。
病院での実際の症例をもとに書かれているため、患者背景、主訴、現病歴、既往歴、薬歴、身体所見、検査値、経過まで細かく設定されています。
多くの情報の中から、どこに着目すべきかを丁寧に解説されており、症例のどこがポイントだったのかを1つずつ確認しながら学べる構成になっています。
病院薬剤師が実臨床を踏まえて執筆しているからこそ、実際の患者をイメージしながら学べます。

病院ならではの抗菌薬の注射の投与設計や透析患者の症例も含まれており、病院薬剤師にオススメと感じました。
腎機能を通じて、高血圧や糖尿病などさまざまな疾患も学べる本
本書は、腎機能の理解にとどまらず、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症、がん性疼痛に対する緩和医療など、さまざまな疾患の学びにもつながります。
各疾患ごとに腎機能の低下が見られる症例が提示されており、それぞれの疾患に対する治療ガイドラインの解説も含まれています。
そのため、腎機能だけでなく、そもそもの疾患についての理解も深められる内容になっています。

腎臓の本でありながら、他の疾患の理解も深められる1冊だと感じました。
『腎薬ドリル』を読んだ感想【よかった点・気になった点】
ここからは、『腎薬ドリル』を実際に解いて感じたことをまとめていきます。
問題演習型という構成のため、読むだけの参考書とは異なる学び方になる1冊です。

良かった点と気になった点の両方から、率直な感想を整理していきます。
解いてから読むことで理解が深まると感じた
繰り返しになりますが、本書は、問題を解いてから解説を読む構成になっています。
まず自分で考えて問題に取り組むことで、理解できている部分とそうでない部分がはっきりします。
そのうえで解説を読むと、自分の知識が不足している点が明確になり、理解が深まりやすいと感じました。

この「解いてから読む」という構成が他の医療書には少ない、本書の大きな特徴です。
(気になった点)内容が幅広く、すべてを読み切るのは大変でした

私が薬局薬剤師で、普段関わることのない病院での症例が含まれているという前提はありますが、本書は扱う内容が幅広く、すべてを読み切るのは大変だと感じました。
基礎編から実践編まで網羅的に構成されており、一つひとつの内容を理解しながら進めるには時間がかかります。
一般的な参考書であれば、1ページあたり1分程度で読み進められることが多いですが、本書は約300ページの内容を読み切るのに、10時間以上かかりました。
問題演習形式であるため、読み進めるというより「取り組む」感覚に近く、気軽に読み切れるタイプの本ではないと感じました。
その分、しっかり時間を確保して取り組めば得られる学びは大きいですが、人によっては途中で読むのがしんどいと感じる可能性もあると思います。
難易度は高いが、初学者にもオススメの1冊

正直に言うと、最初に問題を解く段階では、半分正解できれば十分だと感じるほど難易度は高めです。
私自身の知識不足もありますが、多くの薬剤師にとって簡単な内容ではないと思います。
しかし、それは「初学者には向いていない」という意味ではありません。
解説は非常に丁寧で、読み込むことでしっかり理解できる内容です。
一度解説を読んだあとに、もう一度問題を解くことで理解が定着します。
この「解く→理解する→もう一度解く」という流れが、知識を自分のものにするうえで非常に有効で初学者の方にもオススメだと感じました。
(気になった点)腎機能の学習の2冊目以降として読むのが適していると感じた

とはいえ、初学者にもオススメできる内容であることは間違いありませんが、ある程度の基礎知識がある状態で取り組むと、より理解しやすいと感じました。
腎機能に関する基礎的な知識があると、初見での問題の正答率は確実に上がります。
正解すること自体が目的ではありませんが、ある程度解けた方が読み進めやすいと感じました。

実際に取り組んでみて、全く解けない問題が続くと、正直なところ、つまらないです。
読み進めるのがしんどくなります。
そのため、腎機能の基礎を学べる別の書籍を一度読んだうえで本書に取り組むと、よりスムーズに、そして楽しく読み進められると感じました。
『腎薬ドリル』を読んで私が学んだこと
ここからは、『腎薬ドリル』を読んで私が学んだことを紹介します。

腎機能の評価方法についてはもちろんですが、それ以外にも印象に残る学びがいくつかありました。
その中から、特に印象に残った内容を紹介していきます。
【例外】プラミペキソールは脂溶性なのに腎排泄される
プラミペキソールは、パーキンソン病の治療に用いられるドパミン作動薬の一つです。
ドパミン受容体に作用することで、運動症状の改善に寄与します。
このような中枢神経系に作用する薬は、脳へ移行する必要があります。
脳には血液脳関門と呼ばれるバリアがあり、水に溶けやすい薬は通過しにくいため、一般的には脂溶性の高い薬の方が移行しやすいです。
パーキンソン病治療薬は、脳に移行して作用する必要があるため、一般的に脂溶性が高い特徴があります。
脂溶性の薬は水に溶けにくく、そのまま尿中に排泄されにくいため、体内で排泄されるには肝臓で代謝を受ける必要があります。
そのため、パーキンソン病治療薬の多くは、腎排泄ではなく肝代謝型の薬剤となっています。
一方で、プラミペキソールは脂溶性を持ちながらも、主に腎臓から排泄されるという特徴があります。
脂溶性であっても、水に溶けやすい性質をあわせ持つなどの理由により、このような排泄経路をとるとされています。

私自身、パーキンソン病治療薬は脳で作用するため脂溶性が高く、その結果として肝代謝の薬が多いという点を、これまで意識していませんでした。
そうした前提を理解したうえで、プラミペキソールが例外的な存在であることをあわせて学べたことで、知識の幅が広がったと実感しています。
低アルブミン血症の時は血清Ca値は補正する必要がある
アルブミンは、血液中に存在するたんぱく質で、栄養状態を示す指標の一つです。低アルブミン血症は、低栄養や慢性疾患などで見られることが多く、特に高齢者に多いです。
カルシウムは血液中でアルブミンと結合している割合が高い物質です。
血液検査で測定されるカルシウムは「総カルシウム」と呼ばれ、アルブミンと結合しているカルシウムと、結合していないカルシウムの両方を含んだ値です。
実際に体の中で働いているのは、結合していない「イオン化カルシウム」ですが、検査値にはアルブミンと結合しているカルシウムも含まれています。

そのため、アルブミンが低下すると、結合しているカルシウムの量が減り、実際に働いているカルシウムの量が保たれていても、検査値上は低く見えてしまうことがあります。
つまり、アルブミンが低い場合には血清カルシウム値を補正して評価する必要があります。補正を行わないまま判断すると、本来は問題のないカルシウム値を「低い」と誤って評価してしまう可能性があります。
薬局で関わる高齢患者、特に女性では骨粗鬆症の方も多く、アルブミンやカルシウムの値を適切に評価することは重要です。

私自身、これまでカルシウムやアルブミンはあまり意識していない検査項目でした。
今回の学びを踏まえ、今後はアルブミン値もあわせて確認し、より正確にカルシウムを評価していきたいと思います。
インスリン抵抗性は検査値から判断できる
インスリン抵抗性という言葉は、糖尿病領域では基本的な考え方の一つです。
私の知識の中で、インスリン抵抗性のある患者には、メトホルミンやピオグリタゾンが適しているということも理解していました。

ですが、インスリン抵抗性とは具体的にどのような状態なのか、またそれをどのように評価するのかについては、これまで意識したことがありませんでした。
本書では、空腹時インスリン値と空腹時血糖値から、インスリン抵抗性を計算できることが解説されています。
実際の薬局業務では、患者さんから提示される検査結果に空腹時インスリンの項目が含まれていることは少なく、自分で計算する機会は多くありません。
一方で、病院薬剤師であればインスリン値を確認できる場面もあると考えると、より実務に直結するのではと想像します。

もしかすると、普段からインスリン値を確認している方にとっては一般的な知識なのかもしれませんが、私と同じように「聞いたことはあるが、具体的には知らなかった」という方にとっては、新しい学びになる内容だと感じました。
『腎薬ドリル』をオススメできる人
次に『腎薬ドリル』をオススメできる人について整理していきます。

本書はすべての薬剤師に向けた入門書というよりも、目的や状況によって適性が分かれる1冊だと感じました。
どのような薬剤師にとって特に有用だと感じたのか、具体的に紹介していきます。
病院薬剤師
本書は、執筆者の全員が病院薬剤師であり、扱われている症例も病院での実臨床をもとにしています。
そのため、入院患者を想定した症例や、抗菌薬の注射の投与設計、透析患者への対応など、病院ならではの場面が多く取り上げられています。
症例の情報量も多く、患者背景を踏まえて判断する力が求められるため、実際の臨床に近い形で学習できる点も特徴です。

日々の業務の中で腎機能評価や投与設計に関わる機会が多い病院薬剤師にとっては、学びをそのまま実務に活かしやすい1冊だと感じました。
腎機能を学び直したい薬剤師

腎機能について一度学んだものの、知識があいまいになっていると感じている薬剤師にもオススメできる1冊です。
本書は、腎機能評価の基本から始まり、症例を通じて実際の投与設計まで段階的に学べる構成になっています。
そのため、「知っているつもり」になっていた知識を整理し直しながら、実務で使える形に落とし込める点が特徴です。
改めて腎機能を学び直したいと感じている方にとっては、知識の再確認と理解の深掘りの両方ができる1冊だと感じました。
薬局の安全性を高めたいと感じている管理薬剤師
薬局の安全性を高めたいと考えている管理薬剤師にもオススメできます。
本書は、腎機能評価の考え方や投与設計の根拠を学べる内容となっており、自分自身の知識をアップデートするきっかけになります。

私自身、本書を読んだことで腎機能評価の重要性を改めて認識し、業務の中でより意識して確認するようになりました。
さらに、日本腎臓病薬物療法学会のホームページに掲載されている腎機能自動計算ツールを、薬歴パソコンのデスクトップからすぐにアクセスできるようにショートカットを作成しました。

検査値を確認した際にすぐ腎機能を計算できる環境を整えたことで、日常業務の中で自然に腎機能を意識できるようになりました。
知識の習得だけでなく、実際の業務改善につなげることができる点も、本書の大きな価値の一つだと感じました。
透析患者と関わる機会の多い薬剤師
本書は透析施設のある病院に勤務している薬剤師や、透析患者の薬を扱う薬局薬剤師に特にオススメです。

透析患者への薬物投与設計に触れている章もあり、日頃から透析患者に関わる機会の多い薬剤師にとっては、学びが多い内容だと思います。
透析の有無によって薬物動態が大きく変わる薬剤も多く、腎機能だけでなく透析条件も踏まえた判断が求められます。
そうした背景をもとに、どのように投与量を考えるべきかを学ぶことができます。
透析患者への対応に不安を感じている方や、より理解を深めたいと考えている薬剤師にとっては、実務に直結する学びが得られる1冊だと感じました。
編者紹介
本書の編者は、大野記念病院 薬剤部副部長の浦田元樹先生です。
浦田先生は、関西腎と薬剤研究会の会長も務めており、慢性腎臓病や透析医療に関する学習・研究を牽引しています。
本書はその関西腎と薬剤研究会が企画協力しており、腎領域に関する実務的な知見が反映された内容となっています。
さらに、執筆者には多くの病院薬剤師が携わっており、実際の臨床経験をもとに構成されています。
こうした背景から、本書は理論だけでなく、実務に即した視点で腎機能と薬物療法を学べる1冊となっています。
まとめ【現場で正しく腎機能評価をするための1冊】
本書は、問題演習を通じて腎機能評価と投与設計を学べる1冊です。
解いてから読むという構成により、自分の理解を確認しながら学習を進めることができます。

難易度はやや高めですが、その分しっかりと時間をかけて取り組むことで、知識を整理しながら身につけられる内容になっています。
すべての薬剤師に向けた入門書ではありません(もちろんやる気がある方は1冊でもOKです!)が、腎機能評価を実務で活かしたいと考えている方にとっては、学びの多い1冊だと感じました。
【どのような本なのか】
・腎機能評価の基本から、症例を通じて個別具体の知識まで学べる本
・読むだけで終わらない、”問題演習型”の参考書
・腎機能を通じて、高血圧や糖尿病などさまざまな疾患も学べる本
【本書の感想】
・解いてから読むことで理解が深まると感じた
・(気になった点)内容が幅広く、すべてを読み切るのは大変と感じた
・難易度は高いが、初学者にもオススメの1冊
・(気になった点)とはいえ、腎機能の学習の2冊目以降として読むのが適していると感じた
【オススメできる人】
・病院薬剤師
・腎機能を学び直したい薬剤師
・薬局の安全性を高めたいと感じている管理薬剤師
・透析患者と関わる機会の多い薬剤師

本記事では、『腎薬ドリル』の特徴や実際に読んで得られた学びを整理しました。
問題演習を通じて学ぶ構成のため、読み進めるには時間と労力が必要ですが、その分、理解を深めながら知識を身につけられる1冊です。
一方で、難易度はやや高く、基礎知識がある状態で取り組む方がスムーズに読み進めやすい内容です。

本記事が、腎機能の勉強をしたいと考えている方にとって、本書を選ぶ際の参考になれば嬉しいです。
【のしんの一言】

最後まで読んでいただきありがとうございます。
勉強意欲の高い薬剤師のあなたに、ひとつだけ伝えたいことがあります。
「もっと学びたい」気持ちを活かすには、“どこで働くか”もとても大切です。
▶︎ 学び続けたい薬剤師のための“転職の考え方”はこちら



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