【薬歴とは何を書くもの?】薬剤師としての考え方から学べる本|『ホンモノの薬歴の書き方』レビュー
あなたは「薬歴に何を書けばいいですか?」と聞かれたら、どう答えますか?

服薬指導で話した内容を書けばいいんじゃないの?

SOAPに沿って書いているけど、それ以上は考えたことがないかも……
毎日のように薬歴を書いていても、「そもそも薬歴とは何を書くものなのか?」と聞かれると、意外と答えるのが難しいのではないでしょうか。
今回紹介するのは、『薬歴ってどう書くの? 薬剤師のお悩み解決! ホンモノの薬歴の書き方』です。


私自身、薬歴の書き方を体系的に学ぶ機会はほとんどなく、これまで自己流で薬歴を書いてきました。
本書を読んで感じたのは、良い薬歴を書くために必要なのは、文章を上手に書くことや、SOAPの書き方を覚えることだけではないということです。
そもそも患者さんの何に着目するのか。
そこから薬剤師として何を考え、どのような行動につなげるのか。
そして、その結果として何を薬歴に残すのか。

本書は、薬歴を通じて「薬剤師として患者さんをどう見て、どう考えるのか」を学べる1冊でした。
この記事では、
・本書がどのような本なのか
・どのようなことが学べるのか
・実際に読んで感じた良かった点・気になった点
・どんな薬剤師にオススメできるのか
を具体的に紹介します。

「薬歴って、結局何を書けばいいんだろう?」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。
| 評価項目 | 評価 | ポイント |
|---|---|---|
| 総合評価 | 薬剤師としての考え方を見直せる、学びの多い1冊です。一方で、内容には理想論に感じる部分もあり、現場で実践するハードルの高さを考えて星3としました。 | |
| 実務での活かしやすさ | 本書の内容を一人の薬剤師が実践するのは難しいと感じました。一方、薬局全体で取り組めれば、薬局のレベルを大きく引き上げられる内容だと思います。 | |
| 自己学習への向き | 現場で参照する本というより、じっくり学ぶための本です。小手先のテクニックではなく、薬剤師としての本質的な考え方や姿勢を学べます。 | |
| 読みやすさ | 文章がわかりやすく、スラスラ読み進められます。コンパクトで軽く、場所を選ばず読めるのも魅力です。 | |
| コスパ | 税込3,300円。医療書としては標準的な価格帯です。本書の考え方をどこまで実務に活かせるかによって、コスパの評価は分かれると思います。私自身は、学べる内容と実践の難しさを考えて星3としました。 |
【のしんの一言】

知識を活かせるかどうかは、“自分次第”ではなく“環境次第”かもしれません。
もし今の職場に違和感があるなら、一度こちらの記事も読んでみてください。
▶︎学び続けたい薬剤師のための“転職の考え方”はこちら

『ホンモノの薬歴の書き方』はどのような本?
『ホンモノの薬歴の書き方』は、単に薬歴を上手に書くためのテクニックを学ぶ本ではありません。
薬歴とは何かという基本から、薬剤師として患者さんをどう見て、どう考えるのか、そしてそれをどう薬歴に残すのかまで学べる1冊です。

まずは、本書がどのような本なのかを紹介します。
薬歴を通じて「薬剤師の医療行為」を考える本

本書は、単に「薬歴をどう書くか」を解説した本ではありません。
本書では、薬歴を「薬剤師の医療記録」として捉えています。
そもそも薬剤師の医療行為とは何なのか、薬歴には何を記録するべきなのか、というところまで掘り下げています。
その中でも印象的なのが、「良い薬歴は良い服薬指導から」という考え方です。
薬歴だけを上手に書こうとするのではなく、まずは患者さんに対して適切な服薬指導を行う。そのために必要な薬剤師としての考え方から見直していきます。

「薬歴の書き方」を入り口に、薬剤師として患者さんにどう向き合うのかまで考えられるのが、本書の大きな特徴です。
全4Partで基礎から実践まで学べる

本書は、全4Partで構成されています。
Part1「薬歴を取り巻く現状」

薬歴残業など、薬剤師が抱えている薬歴の悩みからスタートします。
そのうえで、「薬歴は宝物」「良い薬歴は良い服薬指導から」と話が進み、薬歴だけを上手に書こうとするのではなく、服薬指導そのものを見直す必要性について解説されています。
Part2「薬歴とは何か?」

ここでは、そもそも薬歴とは何のために書くものなのかを掘り下げていきます。
「薬歴は薬剤師の医療記録である」という考え方をもとに、薬剤師の医療行為とは何か、薬歴には何を記録するべきなのか、良い薬歴とはどのようなものなのかを学びます。
Part3「薬歴が信じられないくらい速く書けるようになるために」

POSを中心に、薬剤師が患者さんの情報をどのように整理し、考え、薬歴につなげていくのかを学ぶパートです。
POS、プロブレム、クラスタリング、アセスメント、SOAPなど、本書を理解するうえで重要な考え方がまとめられています。
Part4「実践薬歴添削~様々な事例における薬歴記載例~」

最後は、13の薬歴添削を通して実践的に学びます。
「毎回Doで困っている」「情報不足でアセスメントできない」「SOAPに複数のプロブレムが混在している」など、具体的な事例をもとに薬歴の考え方を確認できます。
このように、薬歴を取り巻く現状から始まり、薬歴の本質、POSによる考え方、実際の薬歴添削へと段階的に進んでいく構成になっています。
コンパクトで読みやすい
本書はA5判とコンパクトで、ページ数も200ページに満たないため、気軽に読み始めやすい1冊です。
POSやプロブレム、クラスタリングなど、一見すると難しそうなテーマを扱っていますが、文章はわかりやすく、専門用語ばかりで読み進めにくいという印象はありませんでした。
本自体も軽くて持ち運びやすいため、電車での通勤時間など、ちょっとした時間にも読み進められます。

薬歴について本格的に学べる専門書でありながら、身構えずに読み始められる本だと感じました。
『ホンモノの薬歴の書き方』で学べること

本書は、薬歴の書き方や知識を学んで終わりの本ではありません。
本書で学べる内容の根幹にあるのが、POS(Problem Oriented System)です。
POSを軸に、患者さんの何に着目し、どのように考え、それを薬歴として記録するのかを学び、その考え方を日々の業務で実践していく。
それを繰り返すことで、少しずつ適切な薬歴を早く書けるようになることを目指す本だと感じました。

ここからは、本書で学べることを紹介します。
POS(Problem Oriented System)
POSとは「Problem Oriented System(問題志向型システム)」の略で、患者さんが抱えるプロブレムに着目し、その解決に向けて考えていくための考え方です。
もともとは医師が患者さんの情報を整理し、カルテに記録するために生まれた考え方で、その後、看護師や薬剤師などにも広がっていきました。
薬歴というと「SOAP」を思い浮かべる方も多いと思いますが、SOAPはPOSそのものではありません。
POSという大きな考え方があり、その中で患者さんのプロブレムを捉え、情報を整理し、考えたことを記録する方法の一つとしてSOAPがあります。

私自身、本書を読むまでは「POS=SOAPで薬歴を書くこと」という程度の認識でした。
しかし本書では、POSを薬歴を書くためだけの方法ではなく、薬剤師が患者さんについて考えるための根幹として扱っています。

SOAPは知っているけれど、POSについてはよく知らない
という薬剤師にとって、本書はPOSから薬歴を学び直すきっかけになると思います。
プロブレム
POSを理解するうえで、重要になるのが「プロブレム」です。
プロブレムとは、患者さんを見るうえで薬剤師が着目するポイントのことです。
そして、そのプロブレムは、患者さんによって異なります。
たとえば、降圧薬を服用している患者さんのプロブレムを、一律に「#高血圧」と考えるわけではありません。
同じ高血圧でも、食事に気をつけて塩分制限をしている人と、暴飲暴食を繰り返している肥満体型の人では、薬剤師として着目するポイントは変わります。
また、同じ高血圧でも、高齢者なのか妊婦なのかによって、考えるべきことは異なります。

つまり、プロブレムとは病名を当てはめるものではなく、「この患者さんについて、薬剤師として何に着目するのか」ということです。
だからこそ、同じ薬を服用している患者さんでも、プロブレムは一人ひとり異なります。
本書では、プロブレムとは何かという基本から、薬局薬剤師がどのようにプロブレムを取り上げるのかまで学ぶことができます。
「薬歴に何を書けばいいのかわからない」という方にとっても、その前段階にある「患者さんの何に着目するのか」を考えるきっかけになると思います。
SOAP

薬歴を書くときに、多くの薬剤師が使っているのが「SOAP」です。
SOAPとは、
・S(Subjective):主観的情報
・O(Objective):客観的情報
・A(Assessment):評価
・P(Plan):計画
の頭文字をとった記録方法です。
SOAPのそれぞれに何を書くのかは知っていても、「患者さんの何についてSOAPを書くのか」で迷うことはないでしょうか。
ここで重要になるのが、これまで紹介してきたPOSやプロブレムの考え方です。
患者さんのプロブレムに着目し、得られた情報から薬剤師として考え、行ったことをSOAPとして記録する。
つまり、SOAPは薬歴を書くための「型」であり、その前に薬剤師としての思考があります。

本書を読むことで、単に「S・O・A・Pに何を書くか」だけではなく、POSという考え方とSOAPがどのようにつながっているのかを学ぶことができます。
『ホンモノの薬歴の書き方』を読んだ感想【よかった点・気になった点】
本書には、読んでいて「なるほど」と思うことや、これまでの自分の薬歴について考え直すきっかけになる部分がいくつもありました。
その一方で、実際に薬局で働いているからこそ、考えるところもありました。

ここからは、私自身の経験も交えながら、本書を読んだ率直な感想を書いていきます。
薬歴の書き方を超えた本質的な学びがある
本書を読んで一番印象に残ったのは、「良い薬歴」を書くためには、薬歴の書き方だけを学んでもダメだということです。
大切なのは、患者さんの何に着目し、薬剤師として何を考え、何をするのか。その結果として、薬歴があります。

私自身、「薬歴をどう書けばいいのか」を知りたくて本書を手に取りました。
読み終えてみると、薬歴の書き方以上に、「薬剤師は患者さんに対して何を考え、何をするべきなのか」を教えてもらったように感じます。
そして、本書は読んで終わりではありません。
学んだ考え方を日々の業務で実践し、それを繰り返すことで、患者さんを見る力や考える力が少しずつ身についていく。

薬歴の書き方を通して、薬剤師としての実力そのものを高めていけることが、本書の一番大きな学びだと思います。
専門的な内容でもスラスラ読める
本書では、POSやプロブレム、SOAPなど、薬歴について専門的な内容を扱っています。

それでも、文章はわかりやすく、難しい内容でもスラスラと読み進めることができました。
専門用語を並べて解説するのではなく、具体例を交えながら説明されているため、内容をイメージしながら理解できます。
また、本自体もコンパクトで持ち運びやすく、じっくり勉強するだけでなく、通勤時間や休憩時間などにも読みやすい1冊だと感じました。
【気になった点】立場によって実践できる範囲が変わる

本書の考え方には納得できる一方で、「これを実際の薬局で実践するのは難しい」と感じる部分もありました。
本書でも、薬歴の書き方は薬局全体で統一しなければ意味がないという趣旨が書かれています。
たしかに、一人の薬剤師だけが薬歴の書き方を変えても、他の薬剤師と共有されていなければ、十分に機能しないと思います。
新人薬剤師やパート薬剤師が本書を読んでも、学べることはたくさんあります。ただ、自分一人で薬局全体のやり方を変えるには限界があります。
一方、管理薬剤師や薬局経営者であれば、本書の考え方を薬局全体に取り入れ、薬歴の書き方や業務そのものを見直すことも可能だと思います。

それでも、かなり時間と労力は必要だと感じますが…
誰が読んでも学べる本ですが、立場によって実践できる範囲が変わる。そこは、本書を読んでいて少し気になった点です。
『ホンモノの薬歴の書き方』をオススメできる人
『ホンモノの薬歴の書き方』は、新人から経験を積んだ薬剤師まで、多くの方にオススメできる本です。
薬歴について学びたい方はもちろん、薬剤師としての考え方を見直すきっかけにもなると思います。

その中でも、私が特に本書をオススメしたいのは、次のような方です。
薬歴を基礎から学びたい新人薬剤師
まずオススメしたいのが、薬歴を基礎から学びたい新人薬剤師です。

私の周りの薬剤師に聞いてみても、新人の頃に先輩や指導薬剤師から薬歴の書き方を体系的に教えてもらったという人は、ほとんどいませんでした。
本書では、SOAPの書き方だけでなく、その土台となるPOSやプロブレムの考え方から学ぶことができます。
そして、本書で学んだことを新人の頃から意識して、日々の患者対応や薬歴で実践していく。

その積み重ねは、5年後、10年後、薬剤師としての実力に差が出るのは明らかです。
「薬歴に何を書けばいいのかわからない」という新人薬剤師には、ぜひ早いうちに読んでほしい1冊です。
薬剤師としての考え方を見直したい人
本書は、新人薬剤師だけでなく、ある程度経験を積んだ薬剤師にもオススメです。
毎日の業務に慣れてくると、薬歴を書くこと自体が目的になったり、いつの間にか同じような服薬指導を繰り返したりすることもあると思います。

なるべく早く患者さんをさばかないといけないですもんね。
本書を読むことで、「患者さんの何に着目するのか」「薬剤師として何を考え、何をするのか」という基本に、もう一度立ち返ることができます。
また、専門的な内容を扱いながらも読みやすいので、「何か勉強したいけれど、何から始めよう」と思っている薬剤師にも手に取りやすい1冊です。
自分の患者さんとの向き合い方や日々の業務を見直すきっかけとして、オススメしたい本です。
薬歴業務を改善したい管理薬剤師・薬局経営者
本書を特にオススメしたいのが、管理薬剤師や薬局経営者です。
本書の内容を十分に活かすには、一人の薬剤師が薬歴の書き方を変えるだけでなく、薬局全体で考え方や書き方を共有する必要があります。
その点、管理薬剤師や薬局経営者であれば、本書で学んだことを自分自身で実践するだけでなく、薬局全体の取り組みへと広げることができます。
薬歴の書き方を統一し、スタッフ全員で本書の考え方を実践できれば、薬歴だけでなく、服薬指導を含めた薬局全体のレベルアップにもつながると思います。

本書の内容をより活かしやすいのは、薬局全体の業務を変えられる立場にある管理薬剤師や薬局経営者だと感じました。
著者紹介
本書の著者は、薬剤師の岡村祐聡(おかむら まさとし)先生です。
岡村先生は明治薬科大学を卒業後、臨床検査会社や調剤薬局での勤務を経て、1999年に服薬ケア研究所を設立しました。
服薬ケア研究所では、薬剤師への実践教育や薬局の人材育成などに取り組んでいます。
薬剤師による患者対応を重視した「服薬ケア」の考え方を提唱し、セミナーや講座などを通じて薬剤師教育にも力を入れています。
『SOAPパーフェクト・トレーニング』や『今度こそモノにする薬剤師のPOS』など、薬歴やPOS、患者対応に関する著書も多数あります。
本書も、岡村先生が長年取り組んできた「薬剤師は患者さんにどう向き合うのか」という考え方が反映された1冊です。
まとめ【薬歴の書き方だけでは終わらない1冊】


『ホンモノの薬歴の書き方』について、実際に読んで感じたことを紹介してきました。
本書は、単に薬歴を上手に書くためのテクニックを学ぶ本ではありません。
薬歴を通して、患者さんの何に着目し、薬剤師として何を考えるのかまで学べる本だと感じました。
一方で、実際の薬局で本書の内容を実践するには、難しさを感じる部分もあります。

最後に、本記事のポイントをまとめます。
【本書はどのような本?】
・薬歴を通じて「薬剤師の医療行為」を考える本
・全4Partで基礎から実践まで学べる
・コンパクトで読みやすい
【本書で学べること】
・POS(Problem Oriented System)
・プロブレム
・SOAP
【本書を読んだ感想】
・薬歴の書き方を超えた本質的な学びがある
・専門的な内容でもスラスラ読める
・【気になった点】立場によって実践できる範囲が変わる
【オススメできる人】
・薬歴を基礎から学びたい新人薬剤師
・薬剤師としての考え方を見直したい人
・薬歴業務を改善したい管理薬剤師・薬局経営者

私自身、「薬歴をどう書けばいいのか」を知りたくて本書を手に取りました。
ですが、読み終えてみると、薬歴の書き方以上に「薬剤師として患者さんをどう見て、何を考え、何をするのか」を学んだように感じます。
本書で学んだことを日々の業務で実践していくことで、薬歴だけでなく、薬剤師としての実力を高めることができると1冊でした。

オススメです。ぜひ手に取ってください。
【のしんの一言】

最後まで読んでいただきありがとうございます。
勉強意欲の高い薬剤師のあなたに、ひとつだけ伝えたいことがあります。
「もっと学びたい」気持ちを活かすには、“どこで働くか”もとても大切です。
▶︎ 学び続けたい薬剤師のための“転職の考え方”はこちら






