【薬剤師向け】難しいけれど学びが多い!『検査値の読み方教えます!』レビュー
AST・ALT、γ-GTP、CK……。
採血結果でよく目にする検査値ですが、「それぞれ何を表しているのか?」と聞かれたとき、自分の言葉でしっかりと説明できるでしょうか?

私は、「AST・ALT、γ-GTPは肝機能」
「CKは筋肉に関係する」
くらいの知識で止まっていました。
そんな私が「検査値について学びたい」と思って手に取ったのが、『薬剤師のための薬物療法に活かす検査値の読み方教えます!』です。

実際に読んでみると、検査値だけを学ぶ本という印象ではありませんでした。
むしろ、さまざまな症例をもとに、検査値を通して疾患や病態について学んでいく本だと感じました。
難易度はかなり高めです。
わからないことも多く、その都度調べながら読み進めました。
ただ、だからこそ検査値だけでなく、疾患・病態や副作用など、薬剤師としてさまざまな知識を広げることができた1冊です。
この記事では、実際に本書を読んだ感想をもとに、
・本書がどのような内容・特徴の本なのか
・実際に読んで学んだこと
・難易度や、どのような薬剤師にオススメできるのか
について紹介します。
検査値についてもう一歩踏み込んで学びたい薬剤師は、ぜひ本選びの参考にしてみてください。
| 評価項目 | 評価 | ポイント |
|---|---|---|
| 総合評価 | 中〜上級者向けの一冊です。 ある程度、検査値について基礎知識がある薬剤師が、さらに知識の幅を広げるにはとても参考になる本だと思います。 ただし、これから検査値を勉強するすべての薬剤師に「まずこの1冊」とオススメできる本ではありません。その点を考慮して、総合評価は★3としました。 | |
| 実務での活かしやすさ | 業務中にわからないことをサッと調べるために開く本ではありません。 机に座ってじっくり読み進める、自己学習用の参考書だと感じました。 | |
| 自己学習への向き | 机に座って、わからないことを自分で調べながら読み進める。そんな自己学習に向いている本です。 一方で、内容が少し重たいため通勤時間などには読み進めにくく、ケーススタディもアウトプットしやすいページ構成とは言えません。 その点を考慮して★4としました。 | |
| 読みやすさ | 文章自体は読みやすいです。 ただし、疾患や病態、検査値に関する専門用語や前提知識が多く、わからないことを調べながらでないと読み進めるのは難しいと感じました。 | |
| コスパ | 価格は税込3,520円。医療書としては標準的な価格帯だと思います。 一度読んで終わりではなく、わからないところを調べたり、何度も読み返したりしながら、本書の内容をしっかり自分のものにしたい1冊です。 |
【のしんの一言】

知識を活かせるかどうかは、“自分次第”ではなく“環境次第”かもしれません。
もし今の職場に違和感があるなら、一度こちらの記事も読んでみてください。
▶︎学び続けたい薬剤師のための“転職の考え方”はこちら

『薬剤師のための検査値の読み方教えます!』はどのような本なのか?
本書は検査値について学びながら、疾患や病態についての知識も深めていく1冊です。

まずは実際に読んで感じた本書の特徴を、3つに分けて紹介します。
検査値を通して疾患・病態について学ぶ本

本書を読んでまず感じたのは、単純に「検査値について学ぶ本」ではないということです。
第2章のケーススタディは、「血算」「肝・胆道系」「腎機能・尿検査」「CK」など、10領域の検査値ごとに分類されています。
ただし、実際の本文では、それぞれの検査値について順番に解説していくわけではありません。
たとえば、「肝・胆道系の異常」では、次のような疾患・病態が取り上げられています。
【AST・ALT】
・薬物性肝障害(肝細胞障害型)
・C型慢性肝炎
【ALP・γ-GTP・ビリルビン】
・薬物性肝障害(胆汁うっ滞型)
・胆管癌
このように、検査値ごとに分類されていますが、実際に本文のテーマとなっているのは疾患や病態です。

そのため私は、「検査値の本を読んだ」というよりも、検査値を通してさまざまな疾患や病態について勉強したという感覚が強く残りました。
検査値について学びながら、それを通して疾患や病態への理解も深めていく。
そこが本書の大きな特徴だと思います。
症例を中心に学ぶケーススタディ形式

本書の中心となる第2章は、症例をもとに学んでいくケーススタディ形式になっています。
ケーススタディは、次のような構成となっています。
・症例
・検査値から何が読み取れるか
・考えられる病態
・チェックすべき症状
・他に何が考えられるか
・どうするか
・医師からひとことアドバイス
・まとめ
・その病態の基礎知識
最初に患者背景や服用薬、検査値などが提示され、そこから「検査値から何が読み取れるのか」「どのような病態が考えられるのか」と順番に掘り下げていきます。
さらに、チェックすべき症状や他に考えられる原因、どのように対応するのかまで解説され、最後にはその病態についての基礎知識もまとめられています。
このように、症例ごとに提示された検査値を用いて、疾患・病態について学んでいくのが本書のケーススタディです。
医師が薬剤師に向けて執筆している

これも本書の大きな特徴です。
本書は、医師が薬剤師に向けて「検査値はこのように見るんだよ」という視点から解説しています。
そのため、単に検査値の意味を説明するだけではなく、その検査値からどのような疾患や病態が考えられるのか、他に何を鑑別する必要があるのかといった内容まで踏み込んでいます。

薬剤師として働いていると、薬の効果や副作用を確認するために検査値を見ることはあっても、鑑別まで考える機会はそれほど多くないと思います。
本書では、普段の薬剤師業務ではあまり触れることのない、医師が検査値をどのように見ているのかという視点を学ぶことができます。

薬剤師とは少し違った角度から検査値について学べることも、本書を読んでいておもしろいと感じたポイントです。
『薬剤師のための検査値の読み方教えます!』で私が学んだこと
本書は難しい内容も多く、わからないことをその都度調べながら読み進めました。
ただ、その分、これまで何となく覚えていた知識を整理できたり、知らなかったことを新しく学べたりと、薬剤師としての知識の幅を広げることができました。

ここでは、本書を読んで特に印象に残った3つの学びを紹介します。
スタチン系による横紋筋融解症の知識の幅が広がった
薬剤師であれば、「スタチン系では横紋筋融解症に注意する」ということは知っていると思います。
また、「フィブラート系との併用に注意」「初期症状は筋肉痛」といったキーワードも、多くの薬剤師が知っているのではないでしょうか。
では、
・CKが高値を示したとき、他にどのような疾患との鑑別が必要なのか?
・どのような患者で横紋筋融解症のリスクが高くなるのか?
・スタチン系以外で横紋筋融解症の原因となる薬剤は?
このような質問に答えられる薬剤師は、どれだけいるでしょうか?

私は答えられません。
本書では、「スタチン系では横紋筋融解症に注意する」という知識から、さらに一歩踏み込んだ内容まで解説されています。
ちなみに先ほどの質問は、
・CK高値
横紋筋融解症以外にも、心筋障害、筋疾患、激しい運動・外傷などで上昇します。
・リスク因子
高齢、腎機能低下、甲状腺機能低下、薬物相互作用などに注意が必要です。
・原因薬
スタチン系だけでなく、抗菌薬、抗精神病薬・抗パーキンソン病薬、痛風治療薬など複数の薬剤が原因になり得えます。

本書を読んだことで、知っているつもりだった横紋筋融解症について、さらに一歩踏み込んで学ぶことができ、知識の幅が広がりました。
肝機能を評価する検査値を整理できた
AST、ALT、γ-GTP、ALP。
いずれも採血結果でよく確認する、基本的な検査項目です。
どれも肝機能を評価する検査値であることはわかっていましたが、「それぞれ何を表しているのか?」と聞かれると、私はうまく説明できませんでした。
本書を読んで、これらの検査値についてしっかりと整理することができました。
簡単にそれぞれの特徴をまとめると、
【AST】
肝臓だけでなく、心筋や骨格筋などにも存在する酵素。肝臓以外の障害でも上昇する。
【ALT】
主に肝臓に存在する酵素。ASTよりも肝臓に特異性が高く、肝細胞の障害を反映する。
【ALP】
肝臓では胆管上皮細胞に分布する酵素。胆管障害や胆汁分泌障害、胆道閉塞などで上昇する。また、骨などにも存在するため、肝・胆道系以外の疾患でも上昇することがある。
【γ-GTP】
胆管上皮細胞に分布する酵素。ALPと同じく、胆管障害や胆汁分泌障害、胆道閉塞などで上昇する。また、アルコールや薬剤の影響でも上昇する。

普段からよく見る検査値だからこそ、「肝機能の数値」とぼんやり覚えるのではなく、それぞれの違いを整理できたことは勉強になりました。
PPIによる血小板減少症
PPIによる血小板減少症についても、本書を読んで改めて勉強することができました。

実は以前、病院で勤務していたときに、PPIによる血小板減少症の症例に遭遇したことがあります。

私が直接担当していた患者さんではありませんが、先輩薬剤師が副作用被害救済制度への申請の仕方を患者さんの代わりに調べていたことがありました。
その経験があったため、「PPIで血小板減少症が起こることがある」という知識は持っていました。
しかし、どのくらいの頻度で起こるのか、投与開始からどのくらいで発症するのか、中止後どのくらいで回復するのかといったところまでは理解していませんでした。
本書では、PPIによる血小板減少症について、発症時期や回復までの期間、血小板の寿命などと関連づけながら解説されています。

さらに、私が本書を読んで初めて知ったのが「偽性血小板減少症」です。
これは、採血後に採血管の中で血小板が凝集することで、実際には血小板が減少していないにもかかわらず、検査上は血小板数が低く測定されてしまう現象です。
PPIによる血小板減少症という知っていた副作用について改めて学ぶだけでなく、そこから偽性血小板減少症という新しい知識まで得られました。
『薬剤師のための検査値の読み方教えます!』を読んだ感想【良かった点・気になった点】
内容はかなり難しく、決してスラスラ読める本ではありませんでした。
一方で、わからないことを調べながら読み進めることで、検査値だけでなく、疾患・病態や副作用など、薬剤師としてさまざまな知識を広げることができました。

良かった点だけでなく、ケーススタディの構成で少し気になった点も含めて紹介します。
調べながら読むことで知識の幅が広がる
本書は、わからないことをその都度調べながらでないと、なかなか読み進めることができませんでした。

なので、1冊を読み終えるまでにはかなり時間がかかりました。
ただ、私はこの「調べながら読む」ということが、本書の良かったところでもあると感じています。
本書に書かれている内容を理解するために調べたことから、さらに関連する知識が得られる。
つまり、本書に書かれていることだけを学ぶのではなく、調べる過程で本書には書かれていない知識まで得ることができました。
読むのに時間はかかりますが、自分に足りない知識を一つずつ補いながら読み進めることで、薬剤師としての知識の幅を広げていける。
これは、本書を読んで良かったと感じた点の一つです。
(気になった点)難易度はかなり高い

本書のタイトルには「薬剤師のための」とありますが、難易度はかなり高いと感じました。
検査値だけでなく、疾患や病態についての専門的な知識も必要になるため、ある程度の基礎知識がないと理解するのは難しいと思います。
内容が濃いため、通勤時間などのちょっとした空き時間に気軽に読み進めるような本でもありません。
机に座って、わからないことを調べながらじっくりと読み込む必要があると感じました。

そのため、これから検査値について勉強を始めようという薬剤師が、最初に手に取る1冊としてはオススメしません。
一方で、ある程度検査値の基礎を学んだ薬剤師が、さらに一歩踏み込んで学ぶには、とても勉強になり、レベルアップできると思います。
一度読んで終わりではなく、何度も読み返しながら少しずつ理解を深めていきたい本です。
(気になった点)ケーススタディの構成はもう少し工夫してほしかった
本書を読んで少し気になったのが、ケーススタディのページ構成です。
本書では、症例のすぐ後に検査値の読み方や異常値についての解説が始まります。
しかも、同じページに解説が書かれているため、症例を読みながらどうしても答えが目に入ってしまいます。

せっかくのケーススタディなので、まずは自分で考え、その後に解説を読んで答え合わせができる構成だと、より学習しやすかったと思います。

実際、私は解説部分を別の紙で隠しながら、まずは自分で考えるようにして読み進めました。
また、症例ページには検査値の基準値が記載されていないため、確認したいときには章の初めにある基準値のページまで戻る必要があり、この点も少し不便に感じました。
本書は症例を通して疾患・病態について学べる内容だからこそ、もう少し自分で考える余白があるページ構成にしてほしかったです。

こうした点からも、通勤時間などに読むより、机に座ってじっくり勉強するのに向いている本だと感じました。
『薬剤師のための検査値の読み方教えます!』をオススメできる人
本書は難易度が高いため、すべての薬剤師にオススメできるわけではありません。

実際に読んでみて、特に次のような薬剤師にオススメしたいと感じました。
病院などで日常的に検査値を見る薬剤師
本書は、病院などで日常的に患者さんの検査値を確認している薬剤師にオススメです。
普段から検査値に触れている薬剤師であれば、基本的な検査値の意味や見方について、ある程度の知識があると思います。
そのため、検査値にあまり馴染みのない薬剤師と比べると、本書の内容も理解しやすいのではないでしょうか。
本書では、検査値を通してさまざまな疾患・病態について詳しく学ぶことができます。

日常的に検査値を確認している薬剤師が、さらに知識を深めるためにオススメできます。
検査値の基礎を学び、次の1冊を探している薬剤師

本書は、検査値についてこれから勉強を始める薬剤師には少し難しいです。
検査値の入門書などで基本的な知識を身につけていれば、次の1冊としてオススメできます。
本書では、基本的な検査値の意味だけでなく、症例を通して疾患・病態との関係まで詳しく学ぶことができます。
入門書で学んだ知識を土台に、さらに一歩踏み込んだ内容を勉強することで、理解を深められると思います。
検査値の入門書を1冊学び、さらにレベルアップしたい薬剤師にオススメです。
薬剤師としての知識の幅を広げたい人

本書は、検査値の本ですが、検査値を通して疾患・病態だけでなく、副作用や鑑別診断などについても学ぶことができます。
また、わからないことを自分で調べながら読み進めることで、本書に書かれていない知識も得られます。
一度読んですべてを理解できる本ではありませんが、繰り返し読み込むことで、少しずつ知識を積み重ねていけると思います。

検査値の勉強をきっかけに、薬剤師としての知識の幅を広げていきたい人にオススメです。
まとめ【難しいけれど、じっくり学ぶ価値のある1冊】

今回は、『薬剤師のための薬物療法に活かす検査値の読み方教えます!』を実際に読み、そのレビューを紹介しました。
本書は、検査値を通して疾患・病態について深く学べる、読み応えのある1冊でした。

最後に、本書の特徴や読んで感じたことを簡単にまとめます。
【本書はどのような本なのか?】
・検査値を通して疾患・病態について学ぶ本
・症例を中心に学ぶケーススタディ形式
・医師が薬剤師に向けて執筆している
【本書で私が学んだこと】
・スタチン系による横紋筋融解症の知識の幅が広がった
・肝機能を評価する検査値を整理できた
・PPIによる血小板減少症
【本書を読んだ感想【良かった点・気になった点】】
・調べながら読むことで知識の幅が広がる
・(気になった点)難易度はかなり高い
・(気になった点)ケーススタディの構成はもう少し工夫してほしかった
【本書をオススメできる人】
・病院などで日常的に検査値を見る薬剤師
・検査値の基礎を学び、次の1冊を探している薬剤師
・薬剤師としての知識の幅を広げたい人
本書は難易度が高く、一度読んだだけですべてを理解できるような本ではありません。

私自身、わからないことを調べながら読み進めるのに苦労しましたが、その分、検査値だけでなく、疾患・病態や副作用など、さまざまな知識を学ぶことができました。
検査値の基礎を学び、さらに一歩踏み込んで勉強したい薬剤師にオススメしたいです。

検査値についてもっと深く学びたいと考えている方は、次の1冊として検討してみてはいかがでしょうか。
【のしんの一言】

最後まで読んでいただきありがとうございます。
勉強意欲の高い薬剤師のあなたに、ひとつだけ伝えたいことがあります。
「もっと学びたい」気持ちを活かすには、“どこで働くか”もとても大切です。
▶︎ 学び続けたい薬剤師のための“転職の考え方”はこちら






