【薬剤師が読むべきインスリンの勉強本】『外来インスリン療法マスターブック』をレビュー

糖尿病の本
のしん
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あなたは「責任インスリン」という言葉を聞いたことがありますか。

私は聞いたことがありませんでした。

もし耳にしたことがない薬剤師の方に、ぜひ紹介したい1冊があります。

それが、今回取り上げる『外来インスリン療法マスターブック 改訂第2版』です。

本書は、糖尿病専門医が外来でインスリンを処方する医師に向けて書かれた解説書です。

糖尿病治療におけるインスリンやGLP-1受容体作動薬など注射剤の使い方、その考え方を解説しています。

のしん
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医師が医師に向けて書いてある本ですが、外来で処方を受ける薬剤師や、インスリン導入目的で入院する患者を担当する病院薬剤師・看護師にとっても学びが多い内容です。

著者は糖尿病専門医。

診療経験や研究成果をもとに、単なる知識の整理にとどまらず、実際の診療でどう判断し、どう患者に伝えるかまで具体的に示してくれます。

理論と実践が結びついた、現場志向の1冊です。

この記事では、本書の特徴や、私自身が学んだこと、良い点・気になった点、そしてどんな人にオススメできるかを紹介します。

もちろん、冒頭で触れた「責任インスリン」についても解説します。

外来診療でも、インスリン導入目的の入院でも、糖尿病治療を学びたい医療従事者にとって、本書は強力な助けになるはずです。

のしん
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ぜひ本記事を通じて、その魅力を知ってください。

評価項目評価ポイント
総合評価5.0インスリンを普段取り扱うことが少ない薬剤師にも理解できる内容。糖尿病専門医の20年以上の臨床経験をもとにした知見から最新のトレンドまでを130ページに凝縮。多くの薬剤師や医療従事者にオススメできる1冊
実務での活かしやすさ2.0現場で活用するよりも、自己学習用に向いている1冊。患者対応中に調べ物として使うイメージは湧きにくい一方で、唯一、付録の製剤一覧は、処方薬をすぐに確認できるツールです。
自己学習への向き4.0難易度は初学者でも理解できるレベルで、糖尿病領域の基礎知識を学ベます。ページ数もコンパクトで、途中で挫折しにくいボリューム感。ただし、練習問題などアウトプット要素はなく、自ら実際の患者に照らし合わせて学ぶ姿勢がないと、自分の知識として定着させるのは難しい。
読みやすさ4.0コンパクトなボリュームで文章もわかりやすく書かれており、全体としてはとても読みやすい内容。ただし、ところどころに英単語が含まれるため、言葉の意味を調べながら読む必要あり。専門用語を調べること自体は学びになりますが、「ここは日本語で書いてほしい」と感じた箇所があったのも事実です。
コスパ4.5税込2,750円。医療書としては安価な価格帯。内容も実務や自己学習に役立つ情報が多く、この値段で得られる知識量を考えると非常にコスパが高い。
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『外来インスリン療法マスターブック 改訂第2版』とはどのような本なのか

 糖尿病専門医による、外来インスリン処方の実践解説書

のしん
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本書の基本的な立ち位置は、糖尿病専門医が外来でインスリンを導入する医師に向けて書いた教科書的な1冊です。

インスリンの位置づけや導入の考え方、処方設計の流れが、臨床経験に基づいてわかりやすく整理されています。

ただし、医師だけが対象ではありません。

のしん
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外来でインスリン処方を受ける薬剤師にとっても「なぜ“この患者”に“このインスリン”が選ばれたのか」という処方医の意図を理解する助けになります。

患者対応や服薬指導の幅を広げる知識が得られる内容です。

GLP-受容体作動薬や経口薬の併用療法も学べる

のしん
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本書では、インスリン単独の解説だけでなく、GLP-1受容体作動薬や経口薬との併用療法についても幅広く取り上げられています。

近年、欧米の糖尿病学会では注射剤導入の際に、インスリンよりもGLP-1受容体作動薬を第一選択とするケースが推奨されることがあるようです。

特に肥満を伴う患者ではその効果が期待でき、日本でも徐々にその流れが広がりつつあるよう。

また、本書はインスリンなどの注射剤が主役ですが、インスリンを使用している患者に焦点を当てた経口血糖降下薬についても解説されています。

インスリンと内服薬の“相性”を学べる点は、薬剤師にとって処方意図を理解するうえで大きな助けとなりますし、単純にとても勉強になります。

さらに、本書ではインスリンとGLP-1受容体作動薬を組み合わせた配合剤についても詳しく解説されています。

従来の「内服薬の配合剤」とは意味合いが異なり、第一選択として使用されるケースも増えてきている点が特徴です。

これにより、治療の選択肢が広がるだけでなく、患者の負担を軽減しながら血糖コントロールを改善できる可能性があります。

のしん
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薬剤師にとっては、こうした最新の治療トレンドを理解しておくことで処方の背景を読み解きやすくなり、服薬指導や患者支援にも大きく役立つ内容となっています。

専門医の診療経験や“肌感覚”を追体験できる

本書の魅力のひとつは、著者が外来診療の中で感じた印象や“肌感覚”を知れる点です。

実際の現場で「こういう患者にはこう感じる」「このケースではこう考える」といった著者の生の臨床経験が具体的に紹介されています。

さらに、その感覚をただの経験談として終わらせるのではなく、研究データやエビデンスと照らし合わせながら解説しています

診療の肌感覚と研究的な裏付けをうまくすり合わせることで、読者は「現場の実際」と「理論的な根拠」の両方を学ぶことができます。

加えて、20年前の糖尿病治療から現在に至るまでの治療の変化が語られているのも興味深かったです。

インスリン療法や注射剤の位置づけがどのように変化してきたかを知ることで、今の治療の背景を理解しやすくなります。

のしん
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専門書でありながら、単純に読み物として面白く、一気に読み進められる1冊です。

研究データを紹介しつつ、処方への応用を解説

本書では、多くの臨床試験や研究データが取り上げられており、それらを著者がわかりやすく噛み砕いて解説してくれます。

単なるデータの羅列ではなく、「欧米での研究結果を日本人にどのように活用できるのか」といった現場に即した視点が盛り込まれているのが特徴です。

・心疾患系疾患の既往やリスクのある患者を対象とした、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬によるイベント抑制効果の検証

・SU薬とメトホルミンを使用しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にした、3種類のインスリン導入法の比較研究

・「持効型溶解インスリンを含む4回注射中の2型糖尿病患者のインスリン1日総量を変えずに、基礎比率を可能な限り上げる」という介入効果の検討

・BBT(基礎インスリン+食事ごとの追加インスリンを組み合わせた強化インスリン療法)の基礎インスリンを、基礎インスリン/GLP-1受容体作動薬の配合剤に変更した症例の臨床経過

上記の他にも多数の研究と臨床経験を結びつけながら解説されているため、薬剤師にとっても「処方医がなぜその治療を選んだのか」を理解しやすくなる内容となっています。

医師だけでなく薬剤師・看護師にも役立つ内容

のしん
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本書は医師が同業の医師に向けて執筆したものですが、薬剤師をはじめとする他の医療従事者にとっても学びが多い内容です。

インスリンやGLP-1受容体作動薬を中心とした注射剤の糖尿病治療を、医師がどのような基準や考え方で処方しているのかを理解することができます。

また、患者にとってどのような指導や教育が適切なのかについても具体的に示されているため、薬剤師や看護師が日常業務で直面する患者対応にそのまま応用できます。

のしん
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処方の背景と患者指導の両面を学べる点で、幅広い職種にとって有用な1冊です。

『外来インスリン療法マスターブック 改訂第2版』で私自身が学んだこと

本音を言うと、私は保険薬局で働いていますが、インスリンの処方箋に出会う機会はほとんどありません。

定期的にインスリンを処方されている患者さんは2人程度。

のしん
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外来でインスリン導入に立ち会ったことも一度もなく、インスリンの知識はほぼゼロに近いのが現状です。デバイスの手技も曖昧なものばかりで、自信を持って説明できるとは言えません。

そんな私でも、この『外来インスリン療法マスターブック 改訂第2版』は十分に理解できましたし、多くの学びがありました。

ここでは、その中でも特に印象に残ったポイントを紹介していきます。

病院薬剤師として日常的にインスリンを扱っている方にとっては当たり前の内容かもしれませんが、その点はご容赦ください。

 責任インスリンという考え方

責任インスリン」というのは、患者さんの血糖変動の中で、どのインスリンがその時間帯の血糖をコントロールしているのかを意識して捉える考え方です。

インスリンは大きく分けて、基礎インスリン(空腹時や夜間の血糖を支える役割)と、追加インスリン(食後の血糖上昇を抑える役割)の2種類があります。

それぞれ作用時間が異なり、どの場面で効いているかを正しく理解することが重要です。

のしん
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ポイントは、「いま測っている血糖値は、直前に打ったインスリンの結果」ではないことも多いという点です。

例えば、昼食前に測った空腹時血糖値は、朝食前に打った即効型の追加インスリンの効果が反映されています。

このように、「どの血糖値がどのインスリンに責任を持って働いているか」を把握することで、治療の調整ポイントや見立てが明確になり、インスリン治療の理解が深まります。

のしん
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本書では、この責任インスリンの考え方を理解することが重要であると記載されていました。

糖尿病治療におけるインスリンの位置づけと役割【BOTとBBT】

のしん
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私はこれまで「インスリン=最後の切り札」つまり、経口薬でコントロールできなくて仕方なく使うもの、というイメージを持っていました。

本書を読んで気づいたのは、そのイメージがかなり単純化されすぎていたということです。

実際の外来では、インスリンは糖尿病治療の“最終手段”ではなく、患者ごとの病態に応じて柔軟に選択される治療法のひとつでした。

例えば、基礎インスリンを1日1回だけ追加する BOT(Basal Supported Oral Therapy) は、経口薬で十分な効果が得られないときに導入されやすい方法です。

一方で、基礎インスリンに加えて毎食ごとに追加インスリンを投与する BBT(Basal Bolus Therapy:強化インスリン療法) は、より厳密な血糖管理が必要な場合に選択されます。

ここで印象に残ったのが、経口薬との“相性”です。たとえば α-GI(α-グルコシダーゼ阻害薬) は、糖の吸収をゆるやかにするため、基礎インスリンを補うBOTとの相性は良好です。

しかし、BBTのように食事ごとに超速効型インスリンを投与する場合には、インスリンの効果発現と糖吸収のタイミングがずれて低血糖を起こしやすくなるため相性が悪いとされています。

このように「治療法ごとの薬の組み合わせ方」まで解説されているのは、薬剤師にとって処方の意図を理解するうえで大きなヒントになります。

患者さんへの説明や服薬指導の幅を広げる助けになると感じました。

外来でインスリンを処方する医師が注意しているポイント

著者が外来でインスリンを処方する際に意識しているポイントは数多く紹介されています。

その中でも特に印象に残ったのが、次の2つです。

・絶対に低血糖を起こさない単位から始めること

・導入時には自己血糖測定(SMBG)を必ずしも行わなくて良いこと

処方を受け取る薬剤師の立場から見ると、「HbA1cが高いのに、なぜこんなに少ない単位なのだろう?」と感じるケースがあります。

のしん
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ですが本書を読むと、外来でのインスリン導入では血糖値を一気に下げることよりも、まず「正しく注射できること」「注射の習慣を身につけること」を優先していることがわかりました。

そのため、最初はあえて極小量から開始し、低血糖のリスクを徹底的に避けるのが重要とされています。

また、自己血糖測定についても新しい発見がありました。私は「インスリン=自己血糖測定は必須」というイメージを持っていましたが、導入時はそうではないとのこと。

毎日の測定は患者にとって大きな負担となり、せっかく導入しても途中でやめてしまうリスクがあります。

導入初期は少量投与で血糖値の大幅な改善は見込みにくいため、自己血糖測定をマストとせず、治療継続を優先するという考え方が紹介されていました。

のしん
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この2点を知り、

「インスリン=大量投与で一気に改善」

「導入=自己血糖測定必須」

という自分の思い込みが覆されました。

処方医の判断基準を理解できることで、薬剤師としても患者さんへの説明や声かけの幅が広がると感じました。

GLP-1受容体作動薬の有用性と配合剤の特殊な位置づけ

本書では、インスリン単独の解説にとどまらず、GLP-1受容体作動薬との併用や配合剤についても詳しく取り上げられています。

のしん
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特に興味深いのは、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の位置づけです。

一般的に配合剤といえば、降圧薬や経口血糖降下薬などで、

・既存の薬をそれぞれ使っても十分な効果が得られない場合の切り替え

・多剤併用による錠数を減らして患者負担を軽くする目的

で使われることが多いと思われます。

しかし、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤はそれとは異なるケースがあるようです。

配合錠のように“負担軽減”のために位置づけられるのではなく、ファーストインジェクション(最初の注射剤)として選択されることがあるのです。

つまり、治療の「代替薬」ではなく「第一選択肢」として使われるケースがある点が、これまでの配合剤とは大きく異なる特徴といえます。

この背景には、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬を同時に使用することで、双方の強みを活かしながら弱点を補い合えるという利点があります。

血糖コントロールの改善効果に加えて、低血糖のリスクを抑えつつ体重増加を防ぎやすい点も大きなメリットです。

のしん
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薬剤師としては、「配合剤=錠数を減らすもの」という固定観念を持たずに、この注射配合剤の特殊な立ち位置を理解しておくことが重要だと感じました。

本書の感想(よかった点・気になった点)

ここでは、本書を読んでみて私が率直に感じたことを書いていきます。

「ここが良かった!」と思えた部分もあれば、「ちょっと気になったな…」というところもありました。

のしん
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これから読む方がイメージしやすいように、良い点と気になる点の両方をシェアします。

処方医の意図を想像しやすくなる

のしん
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正直に言うと、これまではインスリンの処方を見ても「なぜこの薬が選ばれたのか」と考えることすらできませんでした。

ただ処方どおりに薬を渡して、「低血糖に気をつけてください」と声をかけるのが精一杯。

処方の背景を深く想像する余地が自分にはありませんでした。

本書を読んで初めて、インスリンの種類や投与方法の選択には、患者さんの体型や既往歴、低血糖リスクなど、さまざまな要素が影響していることを学びました。

のしん
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これまで見えていなかった処方医の意図を想像できるようになったことで、薬剤師としての視点が大きく広がると感じました。

今後は患者さんへの説明や声かけにも、この学びを活かしていきます。

患者へのアドバイスのレパートリーが広がる

のしん
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これまでの私は、インスリンを使用している患者さんに対して「低血糖に気をつけてください」と伝えるくらいしかできませんでした。

どんなポイントに注意して声かけをすればいいのか、わからなかったです。

本書を読むことで、処方医がどのような基準でインスリンやGLP-1受容体作動薬を選んでいるのかを知ることができ、患者さんへの具体的なアドバイスの幅が広がりました。

例えば、運動療法についても新たな学びがありました。

インスリンを使用している患者さんには「週数回のまとまった運動」だけでなく、「食後すぐに軽く散歩する」といった工夫も血糖コントロールに有効であることを知りました。

たとえば「食後10分歩くだけでも改善につながるので、無理のない範囲で取り入れてみましょう」といったアドバイスが印象的でした。

ちなみに補足すると、体内で膵臓から分泌されるインスリン(内因性インスリン)はまず門脈を通って肝臓に作用します。

一方で、注射によるインスリン(外因性インスリン)は皮下から吸収され、主に筋肉で作用します。

そのため、インスリン注射をしている患者さんでは、食後に筋肉を動かすことが血糖改善に直結しやすいという理由です。

のしん
のしん

このように、薬剤師としてのアドバイスのレパートリーが増え、患者さんとの関わり方がより具体的かつ実践的なものになると感じました。

ページ数が少なく、手軽に読み切れる

本書は約130ページほどのコンパクトなボリュームで、集中すれば3時間もあれば読み切れます。

医療書というと分厚くて読み進めるのが大変なイメージがありますが、本書は要点が整理されていてスラスラと読めるのが特徴です。

のしん
のしん

私のようにインスリンの知識が乏しい薬剤師でも最後まで挫折せずに読み切れたのは、この分量のおかげだと思います。

まず1冊通して読んでみたい」という方にも手に取りやすい良書です。

(気になった点)英単語が多く、調べながら読む必要がある

読み進めていて気になったのは、本文中に英単語が多く登場する点です。

私自身、意味を調べないと理解できなかった箇所がいくつもありました。

たとえば本書には以下のような表現が出てきます。

・基礎インスリンを使用したBOTでは一般的に空腹時血糖値をモニターしながら目標血糖値に至るまで treat to target していく必要があります。

コモンディジーズである糖尿病を診ているのは専門医だけではありません。

・インスリン導入を考慮する際は必ずその患者の 血糖プロファイル を思い描くことが重要である。

・インスリンの アンメットニーズ は低血糖とともに体重増加が有名です。

・配合剤とデグルデクは空腹時血糖値を72〜90mg/dLの目標として タイトレーション し、リラグルチドは0.3mgより開始して毎週0.3mg増量し、ほぼ全例1.8mgで加療しました。

医療従事者向けの本なので当然とも言えますが、英語が苦手な私にとってはその都度調べながら読み進める必要がありました。

意味を調べること自体は学びになりますが、もう少し日本語に置き換えて書いてくれた方が読みやすかったかもと感じました。

ちなみに、意味は以下の通りです。

treat to target:目標値を設定し、その達成を目指して治療を調整すること

コモンディジーズ:一般的によく見られる病気

血糖プロファイル:一日の血糖値の変動パターン

アンメットニーズ:満たされていない医療上のニーズ

タイトレーション:投与量を少しずつ調整すること

(気になった点)インスリン手技の解説が掲載されていない

本書はあくまで処方医向けに書かれているため、インスリン注射の具体的な手技やデバイスの使い方については触れられていません。

単純にデバイスの使い方をよく知らない私は、読みながら「このインスリンってどうやって使うんだろう?」と疑問に思う場面がありました。

ただ、日頃からインスリンを扱っている医師や病院薬剤師にとっては当たり前のことかもしれず、そこまで気にならない人も多いかもしれません。

『外来インスリン療法マスターブック 改訂第2版』をオススメできる人(薬剤師目線)

本書はもともと医師向けに書かれた1冊です。

のしん
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ですが、薬剤師として読んでみると学びが多く、参考になる場面もたくさんありました。

ここでは、その医師向けの本を薬剤師目線で見て「こんな人にオススメできる」と感じた対象をまとめました。

 外来でインスリンやGLP-1受容体作動薬の注射剤の処方をよく受ける薬局薬剤師

のしん
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もし薬局でインスリンやGLP-1受容体作動薬の処方箋を受ける機会が多いなら、本書で勉強しておくのはとても有意義だと思います。

インスリンやGLP-1注射剤は、経口薬とは異なる特徴や注意点が多く、処方の背景を理解していないと対応が難しいケースもあります。本書を読めば、医師がどのような考え方で処方しているのかを学べるため、日々の処方対応に安心感が生まれます。

注射剤を触る機会が多い薬剤師は基礎を整理し直しておくことで、患者さんとの会話や服薬指導に自信を持てるようになると感じました。

インスリン使用患者へのアドバイスに自信がない薬剤師

インスリンを使用している患者さんに、どんな言葉をかければいいのか悩んだ経験はありませんか。

私自身、これまでは「低血糖に気をつけてください」と伝えるくらいしかできず、具体的なアドバイスに自信がありませんでした。

のしん
のしん

本書を読むことで、医師がどのような基準でインスリンやGLP-1受容体作動薬を処方しているのかを理解でき、患者さんへの説明の幅が広がります。

運動療法について「食後に軽く歩くと血糖コントロールに有効」といった生活習慣の工夫を伝えられるようになりました。

また、治療の流れや処方医の考え方を知ることで、患者さんの背景や生活スタイルに合わせて声かけを工夫できるようになり、状況に応じたいろいろな引き出しが増えたと感じました。

結果として、患者さんとの会話に厚みを持たせやすくなり、安心してコミュニケーションが取れるようになります

インスリン導入患者が多い病棟に配属された新人病院薬剤師

病棟に配属されたばかりで、インスリン導入目的の入院患者さんを多く担当することになった新人薬剤師にとっても、本書は強い味方になると思います。

インスリン治療は種類や投与方法が多く、さらに患者ごとに調整の考え方が異なるため、経験が浅いと処方意図を読み解くのは難しいのではないかと想像します。

本書では、BOTやBBTといった治療の基本から、GLP-1受容体作動薬との併用や配合剤の使い方まで整理されているため、処方の背景を理解する助けになります。

新人のうちは「とにかく処方どおりに調剤するだけ」で精一杯になりがちです。

ですが、医師がどんな基準で治療を選んでいるのかを知っておくことで、早い段階から患者さんやチーム医療に貢献できる視点が身につきます

現場での経験と組み合わせれば、学びを加速させる1冊になるでしょう。

インスリンや自己注射の患者指導を担当する看護師

のしん
のしん

インスリンやGLP-1受容体作動薬といった注射剤は、実際に患者さんへ自己注射の指導を行う場面が多いのは看護師です。

患者A
患者A

どうしてこの薬を打つの?

患者B
患者B

他の薬とどう違うの?

といった質問に対して、納得感のある説明をするには、処方医の考え方や治療全体の流れを理解しておく必要があります。

本書では、医師がどのような基準で治療法を選び、どのように患者教育につなげているのかが紹介されているため、看護師が自己注射の指導をする際の背景知識として非常に役立ちます。

単に「打ち方を教える」だけでなく、「なぜこの治療をするのか」を患者さんに伝えるサポートができるようになるのは大きなメリットです。

著者紹介

本書の著者である 弘世 貴久(ひろせ たかひさ)先生 は、糖尿病を専門とする医師です。

大阪医科大学を卒業後、米国国立衛生研究所(NIH)での研究員を経て、順天堂大学や東邦大学で糖尿病・内分泌内科の診療・研究・教育に携わってこられました。

専門は糖尿病学全般、とくにインスリン療法や患者教育で豊富な経験を持たれています。

現在は東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野の教授として、診療と研究に取り組まれています。

これまでに数多くの糖尿病関連書籍を執筆・監修されており、現場感覚に基づいた実践的な解説には定評があります。

【まとめ】薬剤師にも役立つ、医師目線のインスリン教科書

ここまで『外来インスリン療法マスターブック 改訂第2版』を紹介してきました。

医師向けに書かれた本ではありますが、薬剤師や看護師にとっても多くの学びがありました。

のしん
のしん

最後に、本書の特徴や学べることを整理し、どんな人にオススメできるのかをまとめます。

【本書の特徴】

・医師向けに書かれた外来インスリン療法の解説書

・インスリンだけでなくGLP-1受容体作動薬や経口薬との併用療法まで網羅

・専門医の診療経験や研究データを交え、実践的に解説

・130ページとコンパクトで手軽に読み切れる

【本書で学べること】

・責任インスリンの考え方

・BOTとBBTといったインスリン療法の基本的な位置づけ

・外来で処方医が特に注意しているポイント(低血糖リスク回避、導入時のSMBGなど)

・GLP-1受容体作動薬の有用性と、インスリン配合剤の特殊な位置づけ

【本書をオススメできる人】

・外来でインスリンやGLP-1注射剤の処方をよく受ける薬局薬剤師

・インスリン使用患者へのアドバイスに自信がない薬剤師

・インスリン導入患者が多い病棟に配属された新人病院薬剤師

・インスリンや自己注射の患者指導を担当する看護師

のしん
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インスリンを普段あまり扱わない私でも理解できる内容でした。

専門的でありながら読み物としても面白いので、インスリン療法を学びたい方にはぜひ手に取ってほしい1冊です。

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